コニカミノルタ写真研究奨励金 過去の受賞者

[2011年度]

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原子核乾板を用いた中性子イメージング技術の開発

森島 邦博氏

放射線に感度を持つ特殊な写真フィルムである原子核乾板による中性子検出は,従来,中性子によって跳ね飛ばされた陽子の飛跡を光学顕微鏡による目視観察によって確認することで行っていた.しかし,このような人が読み取る方法は膨大な時間がかかり現実的ではなかった.ここで森島氏らは原子核乾板を主検出器としたOPERA実験のために全自動で乾板中の全飛跡を読み出す「自動飛跡読み取り装置」を開発し,現在では10cm×10cmの大きさのフィルムを約2時間で読み出しており,この原子核乾板の自動読み取り装置を用いる事で,原子核乾板の特徴である高い解像力を生かした大面積の中性子イメージングが可能となった.この技術の開発のため,本研究奨励金の申請に至った.
すなわち,中性子ビームを原子核乾板に照射し,その飛跡情報を自動飛跡読み取り装置S-UTSで読み取り,そこから中性子起因の飛跡情報を選別し中性子画像として出力する.ここでは,原子核乾板検出器の構造の検討,中性子起因の飛跡選別アルゴリズムの開発,及びこれらにより得られる性能の評価を行う.
本研究の成果により中性子計測の分野に写真の研究手法を導入することで新しい知見が得られることが期待され,依って本研究奨励金を交付する.

[小島裕研究奨励金]
金膜写真法を用いた超長期保存の可能なマイクロ写真記録システム―現代版ロゼッタストーンの作製―

久下 謙一氏,酒井 朋子氏

ロゼッタストーンは18世紀末にエジプトで発見された紀元前2世紀の文書が記された石碑であり,当時の文書が2000年間保存されていたことになる.近年急速に発展してきたデジタルシステムはその保存に幾多の問題点があることが指摘されている.アナログシステムである銀塩(フィルム)写真は,デジタルシステムの持つ欠点を持たず,白黒フィルムはより長い寿命を持つ。さらに高い解像度を持つので,マイクロフィルムへ縮小記録するシステムが発展してきた.
ロゼッタストーンのようにセラミックス系基板に文書や画像を刻み込めばきわめて安定である.しかしこのような彫刻文字は解像度が低いため情報密度が低く,ベースの厚みが必要なので、文書は重くてかさばったものとなってしまう.
久下氏らは銀塩写真技術を発展させた金沈着現像法により,銀より安定な金の微粒子からなる写真画像を得た.さらにセラミックス基板上に作製した金微粒子写真を焼成して,バインダーのゼラチンを燃焼除去し、金微粒子を溶融して金の膜とした写真画像を作製する金膜写真法を考案した.これは写真フィルムと比べて化学的にきわめて安定であり,銀塩写真の持つ高解像度も保持しているので,マイクロ写真記録システムを用いて縮小記録した金膜写真が作成される.この方法により,超長期に安定でコンパクトに文書の縮小記録された現代版ロゼッタストーンを作製することができると期待され,よって本奨学金を交付する.

[2010年度]

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液晶性有機半導体を用いた光電変換素子の検討

飯野 裕明氏

液晶性を有する有機半導体材料は,これまで感光体で用いられてきた有機アモルファス材料に比べて正孔・電子の移動度が高いことより高品質な有機半導体材料になると考えられている.この液晶性有機半導体は単に高移動度を示す材料ではなく,電荷輸送部位となる π共役系を有するコア部と絶縁部位となるアルキル鎖が自発的に並び電荷輸送部位と絶縁部位がナノスケールでの微細な分離構造を示すといった特徴を有する材料でもある.
このナノ凝集構造による異形分子のアルキル鎖部への掃き出し効果や,電荷輸送の異方性(電荷輸送パスの低次元性)を持つことにより,増感色素分子を導入した際にも電荷輸送パスを汚さずに高感度および高速応答の光電変換素子の実現,厚膜でも膜水平方向へ電荷の拡散が少なく画像のにじみの少ない高品質な光センサー等が期待できる.
このように学術的だけでなく工学的にも興味深い液晶性有機半導体の光電変換素子の研究において新たな知見を加えることが期待され,よって本奨励金を交付する.

[2009年度]

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顔写真の画質特性が印象形成に与える影響

佐藤 慈氏

ポートレート写真,履歴書写真,広告,雑誌,新聞,そして個人的な記念写真など,人の顔は最も頻繁に撮影される被写体の一つである.顔写真は社会生活の様々な場面において重要な役割を果たしており,その写真によって形成された人物の印象が,その後の対人関係や説得的コミュニケーションに大きな影響を与えることが多くの研究により明らかにされている.
申請者はこれまで,人々が顔写真によってその人物の性格や印象を判断する際に,画質特性がどのような影響を与えるのかという問題についての検討を行ってきた.その結果,明るさやコントラストといった画質要因が,人物の印象形成に大きな影響を与えることが明らかとなった.また,画質要因によっては,男性顔と女性顔で異なる影響を与えることも確認している.
さらには,「個人的親しみやすさ」,「社会的望ましさ」,「活動性」という性格特性の三つの基本次元に対して,画質要因が選択的に影響を与える可能性も示唆されている.

本研究は,これら先行研究で得られた知見を踏まえて,「個人的親しみやすさ」,「社会的望ましさ」,「活動性」といった3つの基本次元の観点から顔写真を刺激画像とした印象評価実験を行い,好ましい印象を与える顔写真の画質特性を明らかにすることを目的としている.
本研究の成果は,顔画像を扱うすべての分野に応用可能であるとともに,写真の主観評価手法に新たな知見を加えることが期待され,よって本奨励金を交付する.

[2008年度]

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視覚の感度特性を考慮したカラー画像の画質評価法の構築

羽石 秀昭氏

遠隔医療や電子商取引,デジタルアーカイブなどの分野で忠実な色再現が求められている.氏は,主観評価値と相関性が高いカラー画像画質の定量化法を目指し,視覚の空間周波数感度特性を考慮した画質評価法の研究を進めている.視覚の周波数特性を考慮した色の評価法として,S-CIELAと呼ばれる方法が提案されている.
しかし,氏らのこれまでの追試によれば,この方法によっても,扱うコンテンツに計算結果が依存し,必ずしも十分高い相関性が得られない.そこで,本研究では,このようなコンテンツ依存性の性質を見極め,コンテンツ依存性の低い,すなわち汎用性の高い評価尺度を考案することを目的としている.
本研究の成果はカラー画像を扱う広範な領域に応用可能であり,その研究価値は十分高い.氏のこれまでの画質評価・向上に関する研究実績および現在取り組んでいる評価法に関する研究の重要性に鑑み,本奨励金を交付する.